傷だらけの起業戦士100人インタビュー第12回:セツナクリエイション合同会社 代表 花束 莉花(はなたば りか)さん
起業した人の人生には「失敗」がつきものです。そこには、傷だらけになりながら自分の力で駆け上がっていく戦士たちの物語があります。このインタビューシリーズは、そんな起業戦士達にお話を伺い、その数々の経験談から得た学びを、これから起業したいと考えている人たちに共有し、背中を押してあげられるような企画になれば、そんな想いを込めてスタートしました。
12人目の起業戦士インタビューに応じていただいたのはセツナクリエイション合同会社の代表 花束 莉花(はなたば りか)さんです。デジタルプラットフォームでの動画コンテンツ制作やYouTuberなどのクリエイター育成を軸とした事業展開をされています。若い感性と才能あふれるプロデューサーユニットを組み、広告やプロモーションの支援を行っている花束さん、一時はアイドルにハマり、自身もアイドルとして活動していた彼女はなぜ起業という選択肢を選んだのでしょうか。
独立志向の両親の元で育まれた価値観
学生時代はアイドルにハマりエンタメの道へ
花束さんの両親は、ともにそれぞれの事業を自身で立ち上げて展開していました。自身が幼いころに、父は独立して接骨院の経営を始めました。さらにその後、母も自身の力で脱毛サロンを開業しました。二人とも元々のキャリアではない分野で、ゼロから事業を起ち上げた姿を見ながら、「自分もきっと経営者になるのかな」と、ぼんやりと感じていたそうです。
厳格でしつけに厳しい親に育てられたこともあってか、花束さんの10代は、勉強、部活動、アルバイト、趣味、遊びのどれをとっても全力を出し尽くす、という性格でした。そのため休むということを知らず、心身の限界を超えて体を壊すこともあったと言います。
思春期を迎える時期になると、一生懸命に何かに打ち込むことを恥ずかしく感じてしまう人も多くいる中、花束さんは周囲の仲間に恵まれていました。中学受験して玉川学園へ入学、その後、中高6年間を過ごした花束さんは「周りには素直な性格の人が多く、みんな何事にも全力で打ち込むタイプでした。自身が知る限りでは、学校によくあるいじめも、ヒエラルキーもなく、とにかくみんな認め合い、高め合うという姿勢でした」と当時を振り返ります。
また、学校では音楽が盛んで、キリスト教系の学校だったこともあり、朝に礼拝堂で歌と共に祈りを捧げ、その後、お昼と帰宅時にも歌う、という日常でした。自身も幼少期はディズニーチャンネルに夢中になり、中学時代はAKB48に端を発したアイドルグループ全盛期を体験したことで、歌をはじめとしたエンターテインメントが大好きだったこともあり、高校でもミュージカル部で活躍するなど、学校生活を満喫していました。
そんな中、花束さんは短期留学の渡航先で知り合った仲間から、ももいろクローバーZの存在を教えてもらいます。この”ももクロ”との出会いが、彼女のエンタメ好きを爆発させるきっかけになりました。この頃から、自身でもエンターテインメントが大好きで、将来そういったイベントを作り上げるような仕事に就きたい!と強く思うようになりました。
とにかく自分でエンタメを作りたい
アイドル経験、スタートアップを経て自分の道へ
エンターテインメントを総合的にプロデュースできるような力を身に着けるために、花束さんはデジタルハリウッド大学へ進学します。そこでは映像、ウェブ制作、デザイン、プログラミングなど、とにかくエンターテインメントを作り上げるために必要なことを一通り学ぶことにしました。
学校では幅広い科目を学び、それだけでも多忙な日々ですが、花束さんは大学2年の時にふと、アイドルを自分でやってみてはどうだろうと思い立ち、なんとすぐにアイドル事務所へ応募、見事に合格を果たします。
そしてそれからは、二足の草鞋を履いた超多忙な毎日が始まります。
朝に学校へ行き午前の授業を受けてから移動し事務所のレッスン、さらに学校に戻って必要な科目の授業、夕方からライブ、夜はアルバイト、スキマ時間でグッズへのサインやイラストに何時間もかけたりと、とにかく全力っぷりが伺える日常を当たり前のようにこなしていました。アイドルの仕事は、定期的なライブ活動に加え、営業イベント、タイアップやプロモーションによるラジオやテレビ出演など多岐に渡り、まさに寝る間もない生活でした。
しかし大学卒業を控えた頃、花束さんは現実を見据えてアイドル業の道を離れ、就活することにしました。起業をする前に、社会人として組織に所属するという経験を一度はしておいた方が良いと考えたためです。
最初に就職したのは、飲食業界に関するマーケティングのベンチャー企業でした。入社後に配属された部署での仕事は、飲食関係の顧客向けにプロモーション動画を制作し配信する事が業務でした。チームメンバーもプロとしては全くゼロ経験からのスタートでしたが、映像制作のノウハウをリアルな実践から学び、データ分析を独学で習得しながら、手探りでその分野での知見を深めていきました。
ただ、何事にも全力で取り組み、手を抜けないタイプの花束さんは、業務でのちょっとしたコミュニケーショントラブルをきかっけに精神的な負荷を抱えるようになってしまいました。当時、母の後押しもあり、自身でも危機感を感じていたことから、病院で診察を受けたところ、適応障害、パニック障害であることが判明し、仕事は休まざるを得ない状況になりました。
その後、無事に心身が回復した花束さんは、知人の紹介でYouTuber向けのプラットフォームアプリを開発しているスタートアップ企業へ誘われます。なんと営業の人以外は全員外国人で、日本語が話せないエンジニアでした。短期留学などで海外の人とのコミュニケーションに不安は無かったという花束さんはそのメンバーの事務的なサポートもしながら、自身では案件動画のプランニングや提案を手掛けていました。
自社で開発したアプリのプロダクトマネージャーとして、花束さんはクリエイターへのヒアリングをもとに改善プランを策定するなど、自社製品に愛情を持って取り組んでいました。
しかし、スタートアップ企業では愛情の有無にかかわらず、短期間での成長や収益を求めます。新規事業のクローズを経験しスタートアップに自分は向いていないと気付いた花束さんはその会社から去ることを決めました。
資本金1000円、1カ月足らずで起業
“Entertainment. It’s Everything!
(すべてをエンタテインメントにせよ!)”を目指して
退社後は、映像制作や女子高生向けメディアの執筆ライターなどフリーランスとして生計を立てていました。
ちょうどその頃、周囲の若い人から「YouTuberになりたい」という相談を受けることが多くありました。相談に応えていくうちに、そこに需要を感じた花束さんは「YouTuberなどのクリエイターになりたい人たちのために育成事務所を起ち上げれば良いのでは?」と思い立ちます。
自身でもアイドル活動を経験したことから、怪しい事務所だと思われないためにも、会社として創設することはマストだと考えました。そこで、学生時代からともにイベント運営に携わっていたダンスサークルの仲間を誘って共同代表として合同会社を立ち上げることに。なんと思い立ってからわずか1カ月足らずで会社を作りました。
気になる資本金は1,000円。花束さんは「収入印紙などの代金があるので他に10万円ほどかかりましたが、法人口座もクレジットカードも作ることができました」と笑顔で話します。思い立ったら即行動という花束さんにとっては準備に時間とお金をかけるよりも、とにかくスタートを切ることが先決だったのです。さらに起業の勉強はすべてYouTube上のノウハウ動画でみっちり学び、周りにいる優秀なクリエイターとタッグを組んで動画の制作を手掛けるクリエイティブユニットを結成しました。現在ではクリエイターそれぞれの強みを生かしながら、企業向けの動画制作や、社内向けメディアの内製化支援や育成プログラムを提供しています。
そんな花束さんの今後の展望を聞いてみたところ“Entertainment. It’s Everything!(すべてをエンタテインメントにせよ!)”という言葉を教えてくれました。
自身が通っていたデジタルハリウッド大学のモットーで、卒業した今でも心に残っているそうです。会社員のようにやるべきことが決まっているわけではない分、経営者としてどこへ進むべきか、実は今、少し迷っていると素直に話してくれた花束さん。もともと描いていた起業を成し遂げ、やりたいことに挑戦できる環境になった今、この言葉が初心を思い出させてくれるようです。
「…そうですね。新規事業に挑戦したいです。もともと舞台やアイドル、音楽やイベントなどのエンタメが大好きで始めたので、自分でステージをプロデュースしたいです。私もこれから先、すべてをエンタメにしていきたいという想いもありますし。特に今はコロナ禍でオンラインイベントが増えているので、次はリアルに通じ合えるイベントをなにか作り上げられたらと思っています」
最後に、起業したい人へのメッセージを頂きました。
「起業してみたいけど勇気がない、という人は、一人で悩むのではなく、SNSで発信してみたり、周りを頼ったり、例えば私に連絡して頂いても良いですし、とにかく1つアクションを起こしてみて下さい。起業がすべての答えでは無いですし、個人事業主でも副業でも良いかもしれません。それと、いまはYouTubeで何でも学べますから、ぜひ起業についても学んでみてください」
そんな花束さんが展開される事業に興味を持たれた方や相談がある方は、是非ホームページもチェックしてみて下さい。
セツナクリエイション合同会社
https://www.setsuna-llc.jp/
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