個人でも出来るマーケティング基礎:STP分析

高田馬場でケーキを買う人はどんな人?そこから見えるお客様像とは?!

Aline PonceによるPixabayからの画像

以前、マーケティングについてどのようなものなのか、そしてChili Bean’sがご提供できるマーケティングサービスがどのようなものかについて少しご紹介させていただきました。

しかし、こんな風に思っている人がまだいらっしゃるのでは、と推測します。

前回のコラムでマーケティング領域のことはなんとなく分かったけど、なんか大変そうだし、自分の事業にはちょっと関係ないんじゃない?

…ですよね。わかります。とてもよく分かります。かくいう私もマーケティングを始めたばかりの頃はそのように思っていました。

こんにちは。Chili Bean’sのサイトウです。というわけで今回は、そんな皆様のために、マーケティングの第一歩として実際にフレームワークも使いながら、それっぽいことやってみましょう!という内容です。(あ、「それっぽい」といってもきちんとしたフレームワークですので、マーケティングから縁遠かった方々にとって少しはお役に立てるのではと思っています!)

前回も少しご紹介しましたが「マーケティング」と言う言葉の定義がほとんどの方にとってなじみが薄く、またその範囲が広すぎるということも、マーケティングがいまいちなんのことかわからないと感じてしまう理由のひとつかと思います。けれども、単純化してみると、マーケティング活動は以下の3ステップを繰り返しているだけなのです。

①顧客のニーズ(≒問題点)を見つける⇒②ニーズに応える(≒解決策を与える)⇒③対価をもらう

これを「探し出して(または創り出して)確立する」ことがマーケティングの役割です。といっても、「顧客のニーズ(≒問題点)」が見つかっていればもうほとんどそのビジネスは半分以上成り立っているようなもので、ここが肝だといっても過言ではありません。

そしてもう一点は商品やサービス、ブランドが「差別化」できていることです。もしAさんが高田馬場の駅前でショートケーキを売りたいと思っていたとして、Bさんもまったく同じ味や見た目のショートケーキを同駅前で売っていたとしたらどうでしょうか?よそでも売っているショートケーキでAさんのケーキがBさんのケーキより価値があると思ってもらうのは難しいですよね。

そこで例えばショートケーキの味や見た目、パッケージを改良したり(商品開発)、お店の立地を近くにケーキ屋さんが無く、ケーキの需要がありそうな住宅街に移動させたり(統計データ分析)、お店のこだわりをウェブやSNSに掲載して発信したり(デジタルマーケティング)、クーポンのついたチラシを配ったり(宣伝・販売促進)、メディアに取り上げてもらう(広報)など、Bさんのお店と差別化するために行う様々なことはすべてマーケティングの領域です。

要するに、きちんとしたマーケティング戦略を立ててそれを実行すれば、顧客のニーズに応えることが出来るはずなのです。そして繰り返しになりますが顧客のニーズを見つけられるかが最大の鍵です。(大切なことなので二回言いました。)

しかしどのようにニーズを見つけるのか、どのように差別化するのか、どこに市場があるのかわからない!という方のために、ひとつ有名なフレームワークであるSTP分析をご紹介します。

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どこの誰にどうやって売る?を決定付けるSTP分析

さて、いよいよSTP分析です。メモの準備はいいですか?試験に出ますよ?(冗談です)
このSTPというのは以下の言葉の頭文字を合わせたものです。この手のフレームワークはとかく英語の頭文字をくっつけただけのものが多いのですが、英語が苦手な方も少しずつ慣れていただければと思います。

  • S: Segmentation=セグメンテーション
  • T: Targeting=ターゲティング
  • P: Positioning=ポジショニング

なんだか横文字ばかりで分かりづらいですよね。ただ、一度理解すればまったく難しいものではないので、とにかく先に進みましょう!ひとつずつ説明していきますね。

S: Segmentation=セグメンテーション
自分の商品を買いそうな人、売れそうなところってどこ?を書き出してみる

この最初のステップでは幅広く自分の商品やサービスを展開できそうな市場をすべて書き出します。先ほどのケーキ屋Aさんを例に挙げてみましょう。Aさんのケーキを買ってくれそうな人はどんな人でしょう?どういったときに必要とされますか?どこでどのように販売するべきでしょうか?通常ペルソナ、などといって想定顧客の性別、年代、特徴ごとに分けていったりするのですが、今回はより簡単に誰が、どこで、いつ、と言う視点で列挙してみますね。

  • 誰が: 10代の学生、大学生、30代ママ、50代主婦、20代サラリーマン、高齢者、結婚式場、ホテル、イベント業者、ケータリング業者
  • どこで:地元の店、自社ウェブ、他社ウェブ、イベント会場、コンビニ、スーパー、デパート、配達
  • いつ: 学校帰り、会社帰りや仕事の合間、ママ友会、誕生日、給料日、クリスマス、卒業・入学式シーズン、結婚式

上記は一例ですが、思いつく限り書き出してみましょう。例えばAさんは現在ホテルやイベント業者に卸したりはしていないとしても、どこにニーズがあるのかわかりませんので、現在の顧客以外についても記載していきます。顧客について今回は年齢と職業でセグメントを分けましたが、年収や住んでいる場所、家族構成などあらゆる視点から属性を分けていくことも出来ます。どこで、についてもざっくりオンラインと実店舗だけかもしれませんし、原宿など若者が集う町や大学の近く、ケーキ屋の無い住宅街など細かい設定もできます。自分のビジネスにおいて重要だと思える変数(年齢?住所?家族構成?収入?趣味嗜好?仕事?)を割り出して区分けしてみてください。いつ、という項目をここで明らかにしておくことで後に出てくるP=ポジショニングがやりやすくなりますので、頑張って書いてみてくださいね。

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T: Targeting=ターゲティング
じゃあどこ狙ってく?魅力的なセグメントに照準を定めよう!

セグメンテーションの項目で洗い出した中から、どのセグメントが一番自分の商品にとって魅力的かを見極めましょう。ケーキ屋さんなので若い人の方がいいでしょうか?学生よりも主婦の方がお金がありそうですか?自分の商品が買える場所や売り出したい価格帯も考慮しながらじっくり吟味しましょう。例えばケーキ屋Aさんが高田馬場にある場合と世田谷の住宅街にある場合、はたまた銀座にある場合、秋葉原にある場合ではニーズが違う、ということは明確ですよね?お店のある町はどのような人が来るのか、自分のケーキが他のケーキとどう違うのか、お店はどこにあるのか、買ってくれそうな人は誰なのか?考えてみてください。

ここでは仮にケーキ屋Aさんのお店は高田馬場にあり、ウェブでもショップを展開しているとします。そこでAさんは狙うべきセグメントをメインとサブに分けて以下のように設定しました。大学生といっても男性に的を絞るか、女性にアプローチするかでも後の戦略は変わりますが、狭めすぎると想定顧客の母数が不十分でニッチになりすぎてしまう可能性もあるので、いったんここではざっくりと「大学生」としておきます。

  • メインセグメント:高田馬場に通う大学生
  • サブセグメント:地元在住の30代ママ

ここでもし設定が間違っていたとしても大丈夫です。事業は小さな失敗で軌道修正しながらやっていく方が確実なので、早めに小さく失敗して何度でもやり直しましょう。

P: Positioning=ポジショニング
攻め方は千差万別!狙ったセグメントにどうやってアプローチする?

最後に、先ほど決めたセグメントの市場(顧客)に、Aさんの店のケーキを知ってもらい、買ってもらってあわよくばリピーターになってもらうためにはどうすればいいでしょうか?

高級路線で攻めますか?それとも昔ながらのショートケーキを売りにしますか?「俺のショートケーキ」と名づけてサイズの大きさで男子学生を魅了しますか?安さや種類の豊富さで勝負しますか?それとも競合には作れないような変り種ケーキや趣向を凝らしたデザインで主婦や女子学生のファンを増やしますか?はたまたオーガニックな素材だけを使って安全性を打ち出しますか?

競合にも邪魔されず狙ったセグメントにアプローチするにはどうすればいいでしょう?ケーキ屋さんがどのポジションに行くのかによって、アプローチの仕方も変わってくるでしょう。ご自身の得意分野や夢中になれる好きなこと、こだわり、そしてネットワーク(つまり親族、友達、取引先やプライベートの知り合い)などを見返してみて、どのようなポジションがもっとも効率的に無理なく差別化が出来、来てほしいお客さんにアプローチできるかをよく考えてみてください。その際に地元の学生さん、主婦の方のリサーチもお忘れなく。リサーチといっても難しく考える必要はありません。ウェブで学生さんや主婦の方の傾向を知るのもいいですし、町をぶらぶら散歩しながら観察したり、自分のお店に来てくれるお客さんとおしゃべりしたり、別のケーキ屋さんに入ってみたりするのも良いと思います。

以下は私が仮で策定したてみたポジションと想定ストーリーです。

ポジション:ちょっとだけ贅沢な気分を味わえる、今どきのおしゃれなケーキ屋さん
想定ストーリー:高田馬場の学生がバイト代が入った日や彼氏彼女の誕生日に買ってあげたくなるおしゃれなパッケージとケーキのデザイン。価格は一般チェーンなどより少し高めに設定されている一方で、店内のインテリアや雰囲気は大学生でもリッチな気持ちにさせてくれる。こだわりの有機イチゴをふんだんに使用した写真映えする看板メニューのベリーケーキはママ友会の手土産としても人気。

いかがでしょうか。このようにポジションを決めたら必ずその顧客が商品を買ってくれるところまでを想像できなければなりません。もし想像もつかないような顧客セグメントを狙っているのだとしたらそれは再検討の余地があるでしょう。細かくお客さんの行動や嗜好がイメージできたら、そのお客さんが喜びそうなポイントや価値があると感じてくれるであろうポイントを探り、そこを強化して打ち出すようにしましょう。

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最後に:ポジションが定まったら次にすること

最後に、次の段階としてはこの設定されたポジションと現在のケーキ屋Aさんのお店のポジションとのギャップを知る必要があります。ギャップが大きければ大きいほど、大掛かりなシフトチェンジが必要になります。ギャップが小さければ現在の事業はうまくいっているか、うまくいっていない場合はセグメントと狙ったポジションの読みが外れている可能性があるので、なぜうまくいっていないかを再度検証しなおす必要があるでしょう。

昔ながらのケーキ屋さんが今どきのケーキ屋さんになるためにはリフォームしたりメニューやロゴを変えたり、ウェブサイトを今風のデザインにしたり、支払い方法も現金だけでなく、新しいデジタル決済システムを導入したり、若いアルバイトを雇ったり、宣伝を打ったり、そのイメージを様々なチャネルやメディアを使って顧客にアピールする必要があります。この場合はもともと持っている昔ながらのケーキ屋さんというブランド力を戦略に使った方が効率的ですし、無理も無いでしょう。レトロっぽいものでも若い人が抵抗無く受け入れてくれるアプローチの仕方もあると思いますし、長年の実績というのは信頼の証でもあります。そして何より自分がもともと持っている強みを活かさない手はありません。強みを活かせる市場を探してまずは出来ることから勝負しましょう。資金が潤沢になった時に大きなシフトチェンジも視野に入れることが出来るので焦りは禁物です。

ビジネスやマーケティングの戦略は日々同じではいられません。世界は変化しますし、お客さんのニーズも変わるからです。なんだかうまくいかない、というときには一度手を止めてご自身の現状、そして将来どうなりたいのか、誰に向けて商品をアピールしていけばよいのかを見つめなおしてみるのにSTP分析は役に立つかもしれません。

これからも色々と役立ちそうなフレームワークや分析法をお知らせしていきますのでもし何かこんなことを教えてほしいというものがあったらお気軽におっしゃってくださいね。

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