個人でも出来るマーケティング基礎:”Cash Cowとは?”BCGマトリックスで複数の商品ラインナップ/事業を整理しよう

明けましておめでとうございます!本年もよろしくお願いいたします。もー


はい、今回のお題はBCGマトリックスです。始業したら忙しくてなかなかできないことを今のうちに考えてみるのもビジネス脳の訓練になりますよ。

さて突然ですが質問です。お店や事業を始めた際に、自社の商品やサービスのラインナップをどのように管理し、整理していくべきでしょうか。「うちはかけうどんのみです!」という潔いお店でない限りは必ず複数の商品やサービスを扱っているはず。その場合、定期的にラインナップを見直すことは非常に重要です。1年以上見直さずにいると、その事業において進退の判断を誤ってしまう可能性もあるからです。突き進む勇気も大切ですが、撤退する勇気も同時に大切ですよね…

みなさんこんにちは、チリビーンズのマーケティングサポーター、サイトウです。今回は製品やサービスのラインナップ検証、整理の際に役立つマーケテイング基礎、BCGマトリックスをご紹介します。もうアルファベットが並んだだけのフレームワークにもだいぶ慣れてきたのではないでしょうか(苦笑)

BCGマトリックスとは、進退の判断を助ける強力な武器

まずBCGマトリックスとはなんぞや、というお話なのですが、このコラムを読んでいただいている方の多くはもう薄々気づいていると思いますが、3つの単語の頭文字を取ったものです。その単語はBoston Consulting Groupで、1968年にこのフレームワークを考案したブルース・ヘンダーソンが創立した企業名の略になっています。つまりBCGという言葉自体にはフレームワークにまつわる意味は何も含まれていないので要注意です。

さて、BCGマトリックス分析は、自社の事業、商品やサービスのポートフォリオ(ラインナップ)を整理し、進退を判断したり、どこへ資源の投資をするかといったことを判断するために使います。これ以上投資しても無駄な事業や商品は早めに撤退の判断をしたりその資源を別の分野へ投資、活用したり、より儲かる分野には優先的に投資をしたりといった経営判断の際に非常に役に立つフレームワークとして、経営学では必ず紹介される超定番です。方法としては、まずその商品(または商品群)を、その市場の成長率や自社内の市場シェア(売上げ全体に占めるその商品の売上比率)から以下の4つに分類します。

  • 1. Pet(負け犬): 成長率が低く、市場シェアも低い
  • 2. Question Mark(問題児): 成長率が高いが、市場シェアは低い
  • 3. Stars(スター): 成長率が高く、市場シェアも高い
  • 4. Cash cow(金のなる木): 成長率が低く、市場シェアが高い

例えば世界的なブランドであるコカ・コーラは、200以上の国や地域で展開し、200以上のブランドを持っているということもあり、どのラインを強めるのか、またどのラインはテコ入れが必要なのか、場合によっては販売中止するといった経営判断も非常に重要になります。コカ・コーラのような幅広いラインナップが無い場合においても、複数の製品やサービスを取り扱っている場合は常に状況を把握しなければなりません。そうした経営判断をする際に役立つのがこのBCGマトリックスなのです。

今回はこのフレームワークをご紹介しつつ、製品ラインナップをパン屋さんで例えてみましょう。(パン屋さんのお話はすべてフィクションです)

1. Dogs(負け犬): 成長率が低く、市場シェアも低い

ここのセグメントに当てはまる商品は、早々にアクションが求められます。投資が結果に結びついていない上に、将来性も薄いからです。この場合、投資の仕方または投資先、あるいは商品の提供までのプロセスに問題があるかもしれません。調達、開発、工場、物流、品質管理、営業、宣伝といった部署にお金ばかりがかかり、リターンが薄い場合はどこかにボトルネックがある可能性があります。改善できる個所が無いかを徹底的に調査し、改善して見込みのある場合は期限を決めて改善プランを立てます。改善の見込みがない、または時間や経費が膨大になってしまう場合は、改善を諦めてその市場からは撤退をし、他の市場へ投資する方が良いでしょう。

パン屋さんの商品例:タピオカミルクパン
ブームの始めに開発に着手、結果的にはブームが過ぎた頃に商品が完成し店頭に並べてみたものの、思ったほどの結果が出ず。タピオカという普段仕入れない材料の調達費や開発費、宣伝費にお金をかけた割にお客様からの反応はいまいちだった。

2. Question Mark(問題児): 成長率が高く、市場シェアは低い

このセグメントにある商品やサービスは、スターにも負け犬にも化ける可能性があります。しかし成長率の高い市場において低い市場シェアに甘んじているため、そこからスターにさせるためには膨大な資金投資が必要になりますので、長期的な資金投資が出来るほどの体力のない企業であれば撤退という判断をすることも、時としては正しい判断と言えます。このセグメントでの経営判断は後に出てくる「Cash Cow(金のなる木)」の将来性や安定性にも関わってきます。もし金の生る木が長期的に安定した、十分な利益をもたらしてくれてるのであれば、問題児をスターに育て上げるために多少の無理が出来るかもしれません。

パン屋さんの商品例:ハットグピザパン
韓流スターや韓国グルメの人気により売れるかと思って商品化したものの、ぱっと見もハットグどの違いが分かりづらく、パン屋のハットグは何がアドバンテージなのかが伝わりづらかった模様。商品を差別化できるようにしクオリティをアップさせ、メディアに取り上げてもらえるようアプローチすればあるいは化けるか?

3. Stars(スター): 成長率が高く、市場シェアも高い

ここに該当する商品やサービスが一番良いのでは?とお思いになるかもしれません。確かに今後も高い水準で成長してくれる市場で高いシェアを誇っている場合、最もROIの高い商品群と言えるかもしれません。ただし、成長率の高い市場というのはえてして競争も激しいものです。今の高いシェアを保ち続けるためには、膨大な投資が必要になってくる可能性も大いにあるのです。ただし、もちろん積極的にプロモーションをしたり、新商品や新しいラインナップを拡充するために開発に力を入れるなど、投資をすればもっともっと利益を生み出してくれる稼ぎ頭を維持するためのアクションは必要です。

パン屋さんの商品例:名物!焼きたて高級生食パン
生食パンというここ数年で盛り上がりを見せている食パンの新しいジャンル。原価は他の総菜パンより安価な割にちょっとした工夫で高級路線で売り出すことに成功した最も利益率の高い商材。高級生食パンという名前だけで客足は伸び、毎日買いに来るご近所リピーターさんも急増。

4. Cash cows(金のなる木): 成長率が低く、市場シェアが高い

ここで長期的に安定した利益が出せていれば、今後その利益を利用して他の問題児やスターに多額の投資が可能になります。目立った変化はなくとも安定しているという意味では最もきちんとケアして維持してあげたい商品群です。スターセグメントの成長率が下がり始めたとしても、その後はせめて、スターが金の生る木でいられるような対策を取りましょう。金の生る木の安定性が持続出来ていれば会社が倒産することはありません。スターになる可能性はありませんが、実はここが一番重要なセグメントなのではと個人的には思っています。

パン屋さんの商品例:昔ながらのアンパン
大人から子供まで店を訪れる人のほとんどがついで買いする商品。創業当初から続く変わらぬ味で不動の人気を誇っている。特に目立った動きは無いものの、安定して売り上げを支えている縁の下の力持ち的商品。

現状を把握して整理してみよう

これまでの情報を元に、パン屋さんのポートフォリオを見てみましょう。

ここで必要になる経営判断はいくつもあります。例えば負け犬のタピオカパンはすぐにやめた方が良いのか、それとも起死回生を狙って続けるのか、ハットグピザパンをスターに押し上げるためにはどのようなアクションが必要か、またそのアクションに必要なコストと時間に耐えられる体力があるか、高級生食パンでもっと稼ぐにはどうすれば良いか、アンパンの定番人気をきちんと維持できるかどうか。

さらに自社分析を終えたら競合分析もした方が良いでしょう。BCGマトリックスはあくまでも自社商品のポジションを表しているにすぎません。競合のポートフォリオを調査することで、見えてくる情報が沢山あるはずです。例えば競合も生食パンを取り扱っている場合、向こうの自社内シェアはどれほどなのか、金額や売れ方はどうかなど探っていくと、自社のポートフォリオとバッティングしているために顧客を食い合っている場合もあるでしょう。その場合は開発に投資をして差別化を図るのか、宣伝により投資するのか、はたまた味にバラエティを付けたラインナップを拡充するのか、取れるアクションは多岐にわたるため、取れる情報、できる分析は実施してから意思決定すると精度の高い決定が下せるのではないでしょうか。

いかがでしたか。BCGマトリックスはざっくりと自社のポートフォリオを把握するのに役立ちます。細かな分析はできませんが、大まかに現状を知るという意味では十分に機能するはずです。またこのマトリックスをさらに進化させたGEモデル(ゼネラル・エレクトリックモデル)というものもあります。これについてはまたいずれお話したいと思います。

そして何かマーケテイング戦略でご相談がありましたらお気軽にお問い合わせくださいね。

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