個人でも競合&市場分析がカンタンに出来ちゃう:SWOT分析
事業を始めたいと思っている方や、事業をもっと改善したいとお考えの方も多いのではと思います。前回は市場(顧客セグメント)から自社のポジションを探るSTP分析をお送りしました。ポジションを設計する際に非常に大切になってくるのが市場分析や競合分析ですよね。でも、実際やったことがないと場合、何から手を付けていいかわからない、そんな方もいらっしゃるかもしれません。
みなさん、こんにちは。チリビーンズ マーケティング・サポーターのサイトウです。今回は、市場分析や競合分析って実際何したらいいの?という疑問を解決する一助になればと、有名な分析のフレームワークをご紹介しようと思っています。
よく使われるものとしてはPESTEL、ファイヴ・フォース、GEマトリックス、VRIO、SWOT、4P、3C分析などがあります。いずれもビジネススクールやマーケティングでお馴染みのものなので、聞いたことがあるというものもあるかもしれません。
今回はこの中から個人的には最も汎用性が高くとっつきやすいと感じているSWOT分析をご紹介したいと思います。
競合のことも市場のことも一度に分かるSWOT分析とは?
まず、このSWOTという文字ですが、4つの要素を表す単語の頭文字からきています。ハイ、出ました。英語の頭文字アルファベット並べただけの手抜き省エネ命名で名づけられたフレームワークですね(笑)。先日コラムに投稿した、STP分析でもお伝えしたように、この手のフレームワークの名前あるあるなのです。とは言え、内容は以下の通り、とてもシンプルで分かりやすいのでご安心ください。
- S:Strengths (自社や商品の強み)
- W:Weaknesses (自社や商品の弱み)
- O:Opportunities (自社や商品にとって機会となるもの)
- T:Threats (自社や商品にとって脅威となるもの)
これら4つの要素をすべて書き出してテーブルにまとめ、最終的にはそれぞれのブロックから戦略を導き出すことが出来るのです。この分析は自社や競合について「S:強み」と「W:弱み」の項目で把握し、市場の状況を「O:機会」と「S:脅威」の項目で正しく認識することで、バランスよく、かつ客観的に現状を整理していきます。それでは早速ひとつずつチリビーンズのビジネスモデルを例に挙げてテーブルを作っていきましょう。
S:Strengths (自社や商品の強み)を明らかにしよう
最初に、自社や商品が持っている強みに着目します。他社と比べてどんなところが抜きんでているのか、お客様が選んでくれる、発注してもらえる理由を考えて見ましょう。とりたてて長所や勝っている点が無いなあ、なんて人でもきっと気づいていないこともあるかもしれません。自分で思いつかない場合、周りの人に聞いてみると、意外な長所に気づくかもしれません。例えばそこまで独自性や特異性、優位性の無いことでも組み合わさることで他社に無い特徴になるかもしれないのです。例えば「有機野菜を扱っている」というお店は多いかもしれませんが「農家さんと超仲良しで色々な情報交換をしている」という特徴があるかもしれませんし、あるいは「栽培方法に詳しい」、はたまた「人一倍情熱がある」、「料理が得意」など、どんなささいなことでも大丈夫です。とにかく思いつく限りじゃんじゃん書き出してみましょう。「これはあまり関係ないかも」というものは最終的に削除すれば良いのです。
回答例:チリビーンズの場合
・小規模な予算(1万円~)でも受けられるマーケティング支援
・きめ細かなヒアリングによるカスタマイズプランの提案
・360度マーケティング業務における豊富な企画・実行経験
・Facebook Blueprint、Google Adwardsなどオンライン広告の資格を保持
・英語対応可
W:Weaknesses (自社や商品の弱み)を見つめなおそう
次に弱みを見ていきましょう。ここも強みと同様、なるべく多く書き出してみる方が分析に抜けがなくなります。例えば個人事業主や起業したての組織はカネ・ヒト・モノすべてが大企業と比較すると小規模になってしまい、スケールでは劣ってしまうことでしょう。自分の短所や負けているところを認めるのは少しつらい作業ではありますが、ここもしっかりと把握しておかなければ自身の大切な事業の現状を把握できません。例えばレストランなどの場合、他社と比較して「提供できるメニューが少ない」といったことや「料理提供までに時間がかかる」といったお店の内部のことの他に、「ウェブサイトが無い」「立地が良くない」といったお店の外の要素もすべて書き出しましょう。
回答例:チリビーンズの場合
・少数精鋭なので大規模なキャンペーンは外注の割合が高くなる
・大企業のような豊富な蓄積や汎用データ、MAツールが無い
・外資系経験がほとんどのため日系企業の商習慣に不慣れ・法人化していないためサービスで使用・提供できないものがある(例えばYahoo! ADパートナーは法人のみ)*2020年11月に法人化
・統計などR&Dに必要な調査などは外部委託となる
O:Opportunities (自社や商品にとって機会となるもの)を捉えよう
次に自社にとっての機会をきちんと捉えていきましょう。強みや弱みと違い、機会と脅威は外部的なもので、自社ではコントロールできない、またはしづらい領域です。その時の経済、政治、時代の流れ、テクノロジーの進化や、流行り廃り、環境、法律などあらゆるものが関係してきます。これによって自身の事業が大きく発展できるかもしれない大切な要因ですので、幅広く調査してください。例えばITの分野はテクノロジーの進化がめまぐるしく、昨日まで最先端だったものがもう今日には新たな代替品に置き換わってしまったりすることもあります。これまではお店に直接電話して出前を取っていたものが、今ではUber Eatsアプリを使ってどこのレストランからでも出前を取る事ができるようになりました。これらはスマホの浸透率があがったこと、オンライン決算への敷居が低くなったこと、GPSやテクノロジーの進歩で誰でも配達員になれるようになったこと、そして新型ウィルスによるリモートワークの推進などが機会を高める要素となっています。
回答例:チリビーンズの場合
・フリーランサーや起業家、自営業など小規模な事業組織の増加
・働き方改革による労働格差の改善
・政府による起業家支援
・個人事業主向けの様々なサービスやツールなどのアプリの登場
・5GやAIによって加速するリモートワークやモバイルによる自動コンテンツ制作やマーケティングオートメーション技術
T:Threats (自社や商品にとって脅威となるもの)を見逃すな
最後に脅威を列挙してみましょう。例えば2018年頃から三度目の流行りを迎えたと言われるタピオカミルクティは10年後に再度流行っているでしょうか?自信を持ってYESと答えられる人は少ないのではないでしょうか。流行の終焉、顧客の思考の変容は近年ますますサイクルが短くなっています。このことはどの業界にとっても脅威ですよね。それぞれの業界にとっての脅威もあればその特定の事業やお店にとっての脅威もあるかもしれません。例えば駅前の開発などは地元の商店街にとっては大きな脅威です。あるいは量子コンピューターの登場で古いコンピューターを使って扱っている事業は淘汰される可能性もあります。
回答例:チリビーンズの場合
・新たなマーケティング手法の台頭で複雑化する市場(コミュニティマーケティング、アプリマーケティング、インフルエンサーマーケティング、ライブコマース、NFTの活用など)
・SNSなどのサードパーティメディアの利用者の減少
・マーケティングオートメーションによるコンテンツやクリエイティブの自動生成
・大手代理店社員による副業などの増加傾向
最後に:テーブルにして状況を把握、必要な戦略を考えよう
さて、これですべて要素が出揃いました。ここから自分の事業や状況を鑑みて、自分の強みや機会を利用できる事業や商品になっているかを見直しします。また、弱みと脅威が事業を弱体化させてしまう要素です。強化するのか、それを補えるように強みを強化するのか、来るべき脅威への準備だけひとまずコンティンジェンシープラン(不測の事態を想定した対策案)として持っておくのか、対応は様々でそれこそ経営者であるあなたの経営判断にかかっています。
チリビーンズの場合、スモールビジネスを対象としているため、大手代理店はさほど脅威ではないことが分かります。逆に、テクノロジーによるマーケティングオートメーションは脅威です。広告制作や動画などのコンテンツ制作はどんどん自動生成できるようになっていくと思います。ここに関しては逆手に取って、どんどん自動化を活用していくことで、簡易的に作れる必要十分なクオリティのものを低価格で提供できると捉えた方が得策でしょう。つまり顧客は、少し予算をかけて生身のクリエイターによって制作されたコンテンツか、格安で自動生成されたコンテンツかを選ぶことが出来ます。下手するとAIがビジネス戦略を考えてくれることもあると思います。これに対抗するためには、私という個人がブランドになるしかないと思っています。お客様から選んでいただけるように、その人にしかない価値や、思ってもいなかった落とし穴にいかにうまく気づけるか、そのために細やかな対話やリアルな調査からいかにうまく引き出していけるか、ということが重要になると思っています。そして優良なビジネスパートナーさんに出会えるかというのも大きなポイントです。(優秀な専門職の皆様、ビジネスパートナーになりましょう!)
いかがでしたか?SWOT分析は簡単に競合や市場の状況を整理するのにはとても向いています。また、自分の強みを再認識できるので、もし何か迷いが生じていたとしても軌道修正することができます。そして実際に分析する際には具体的な数字も調査していくといいと思います。例えば競合との価格や創業年数、社員数、顧客数、フォロワー数、顧客の予想人数、来店頻度等の比較、市場全体の推移などなど、数字で比べることで強みや弱み、機会や脅威といったものもより精度が増していきます。とはいえ、最初はメモ書き程度の軽い気持ちではじめてみるだけでも色々見えてくると思いますよ!今回の記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
みなさんも何か事業のことでお困りのことがあればお気軽にご相談くださいね。
投稿者プロフィール
最新の投稿
- 起業戦士100人インタビュー10/14/2024傷だらけの起業戦士100人インタビュー第20回:株式会社HIVE 岸田大典(きしだひろふみ)さん
- 起業戦士100人インタビュー02/10/2024傷だらけの起業戦士100人インタビュー第19回:株式会社ツバメデザイン 溝口 真一(みぞぐち しんいち)さん
- 起業戦士100人インタビュー09/04/2023傷だらけの起業戦士100人インタビュー第18回:株式会社SmileyLab 井上 倫子(いのうえ りんこ)さん
- 起業戦士100人インタビュー08/11/2023傷だらけの起業戦士100人インタビュー第17回:𠮷村美保司法書士事務所 𠮷村 美保(よしむら みほ)さん